「あ、スカイツリーだ・・・」
南千住駅の南口を出て
すぐ左手からのびる歩道橋を昇り切ったところにある
エレベーターから地上に降りると
グレーの空をたったひとり背負うようにして、
進む先の正面にそれは見えた。
今年は7月に入ってから、
もう2週間以上も雨の日が続いている。
家を出た時、まだ激しく降っていた雨は、
今はたまたま止んでいるのか、
薄日が差していた。
「ラッキー!助かった~!」
今日はあるイベント会場で
「写真撮影」の予約をしているのだ。
今週は、少々ハードだった広島出張から帰ったばかりで、
まだ完全に疲労が回復したわけではなかったが、
顔馴染みのメンバーが主催するイベントと言うこともあって、
気持ち的には「楽しみ」の方が勝っていた。
今日、何を着ようか、
出かける直前まで迷ったが、
全身”てっぱん”のホワイトコーデを選んだ。
「迷った時は、”白”がいいよ」
以前、ミユさんから
そうアドバイスされたことがあったからだった。
とは言え、水たまりを横切るたびに、
新雪のような純白のスカートに
飛沫が跳ねないかと、
内心ヒヤヒヤしていた。
「ミユさんの撮影って、
たいがい服はそれほど重要じゃないんだけど、
まあ・・、いっか!
私が服を好きなんだから。」
傘をたたむと、
あらかじめ頭に入れておいた
現地までの地図を思い出しながら、
乾きかけたアスファルトを軽やかに踏み、
今度は歩幅を大きく進めた。