いつもの散歩コースには
「ここは本当に東京なの?」
と思いたくなるような
田園風景が広がっている

ある日
休閑中の田んぼの畦道で
レモンイエローの中心を
細かく裂けた
白い花びらがぐるりした
小さな花を見つけた

そのなんとも言えない
健気さが愛しくて
しばらくカメラを向けながら
夢中で眺めていると
背後から
年配の女性の声がかかった

「“ハキダメ”なんて
そんなに見て
何がそんなにおもしろいの?」

ーハキダメギク

女性はどうして
その花が“ハキダメ”と
呼ばれるようになったのかを
しばらく講釈し
気が済んだのか
どこへともなく行ってしまった

ーひとつ、利口になりました
ありがとうございました

これは別れ際
わたしが女性に伝えた言葉

それまで知らなかったことを
知ることが出来たことへの
純粋な感謝の気持ち

そしてこの日わたしは
「知らない」ことでしか
味わえない豊かさが
この世にはあるのだと言うことを
彼女から
教えてもらったような気がする